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APRSAF-30

APRSAF-30

2024年11月26日~29日

オーストラリア・パース Australia

共同声明

第30回アジア・太平洋地域宇宙機関会議 共同声明

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アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)にとって、第30回年次会合(APRSAF-30)をオーストラリア・パースにおいて開催できることは喜ばしいことである。本年のテーマは、「持続可能で責任ある地域宇宙コミュニティの連携共創」である。APRSAFは、政府、宇宙機関、宇宙産業の代表者が宇宙分野における課題について意見やアイデアを交換するためのオープンなフォーラムを提供している。

APRSAFは、30年にわたる歴史の中で、地域宇宙機関間の対話を促進するためのプラットフォームから、政府、産業界、研究機関を含む宇宙セクター全体のグローバルな関係者を結集する戦略的かつ包括的な年次フォーラムへと発展してきた。この発展は、刷新された「名古屋ビジョン」に反映されている。「名古屋ビジョン」は、持続可能な宇宙利用や、喫緊の社会課題の解決に資する宇宙技術の応用、さらにはアジア・太平洋地域における経済発展を促進するための地域協力に対するAPRSAFの揺るぎない取り組みを明確に示している。

30年目を迎えた本年、APRSAFは持続可能で責任ある宇宙活動についての議論を大きく進展させるとともに、地域的な取り組みを推進してきた。また、技術分科会活動やワークショップ、全体会合を実施し、新たな活動やさらなる協力の機会について活発な議論を展開してきた。さらに、APRSAF-30のメンバーは、APRSAFコミュニティに太平洋地域の代表者を迎え、対話を開始し、知見を共有する場を設けた。相互理解を通じて、宇宙分野の専門知識および能力を活用し、従来よりも相互に結びついた強靭な地域の構築に貢献することを目指すものである。

i. 広範な地上の社会課題の解決の促進

APRSAFは、地球観測衛星および測位衛星の統合的な利用、ならびに地上観測データの活用を通じて、災害、気候変動、環境変化に関連する地域共通の課題を解決するとともに、SDGsのような地球規模の課題解決に貢献する活動の重要性を認識している。

特に、APRSAF-30は、独自の宇宙機関を持たない国々、特に小規模な太平洋諸島国を含むアジア・太平洋地域全体の利益のために、衛星応用の利用に関する情報およびアイデアを集中的に交換する機会を提供した。

APRSAFは、センチネル・アジアが災害事前防止活動の第3段階を推進し、特に包括的な災害リスク軽減に貢献するための能力構築に重点を置いていることを認識している。さらに、APRSAFは、センチネル・アジアにおける災害後の状況モニタリングおよび災害軽減に向けた定常的な活用、ASEANにおける稲作報告に関するSAFE農業気象プロジェクトの成果、SAFE稲作モニタリングプロジェクトにおいて開発されたツールの実務的活用に向けた研修の実施など、優良事例の共有を歓迎している。

APRSAFは、SAFE CH4稲作プロジェクト(稲作地帯におけるメタン排出量および水管理の評価)における産学官の連携を歓迎する。本プロジェクトは、各国でIoTデバイスや現地調査を通じた現場データ計測ネットワークの展開を目指しており、炭素排出枠取引のガイドラインおよび枠組みに宇宙技術を活用するため、関係者との議論を開始したことを高く評価する。

また、APRSAFは、宇宙機関、利用者団体、国際機関、開発支援機関とのさらなる協力を期待するとともに、地球観測衛星や測位衛星、その他の技術の社会実装を促進するため、成果や知見の共有・普及活動を継続的に強化し、民間セクターとの共創活動を推進することを求めるものである。

ii. 人材育成, 能力構築、科学技術力の強化

iii. 地域の共通課題に対する政策実施能力の向上

アジア・太平洋地域における持続可能な宇宙活動を支援するためには、宇宙活動に適用可能な幅広い分野における人材育成および科学技術能力の向上が求められる。

人材育成およびSDGsへの貢献として、APRSAF Kibo-ABCイニシアチブは、アジア・太平洋地域の宇宙機関および関連団体と協力し、「きぼうロボットプログラミング競技会」「アジアントライゼロG」「アジアン・ハーブ・イン・スペース」などの、「きぼう」利用活動を継続して実施している。2023年から2024年にかけて実施された「きぼうロボットプログラミング競技会」および「アジアントライゼロG」は、新進の研究開発員や技術者を含む記録的な数の学生参加者を集め、人材育成の取り組みを支援するとともに、地域における科学技術能力の向上に寄与した。「きぼうロボットプログラミング競技会」は、日米協力枠組み(JP-US OP3)の下で実施され、フィリピン宇宙庁(PhilSA)が新たにメンバーとして参加した。また、国際連合宇宙局(UNOOSA)およびアメリカ航空宇宙局(NASA)の継続的な参加により、35カ国および地域の学生が参加することが可能となった。APRSAF Kibo-ABCは、宇宙探査を支援するため、レゴリス模擬土を用いた新たな植物実験の検討を進めることに合意した。オーストラリアの「One Giant Leap」を含むいくつかの参加者は、植物成長培養土実験に関する新たなプロジェクト提案を発表し、「きぼう」を通じた地域レベルでの草の根プログラム創出を促進した。さらに、「きぼうロボットプログラミングチャレンジ」および「アジアントライゼロG」における新たな宇宙利用の機会が発表され、国際協力の持続と拡大がさらに推進されることとなった。

KiboCUBEおよびJ-CUBEプログラムは、開発途上国の教育機関および研究機関に対し、CubeSatを開発し、J-SSODを用いて「きぼう」から放出する機会を提供するものである。このプログラムは、産学官連携を通じた宇宙セクターの協力により、人材育成および科学技術の発展に寄与する新たな手段を提供することを目的としている。

APRSAFは、各国による「きぼう」モジュールなどの低地球周回軌道(LEO)インフラの継続的な利用を歓迎する。タイの研究開発員が宇宙環境で飼育したマウスの組織サンプル分析は、そのような注目すべき研究の一例である。「きぼう」利用を通じて培った知識および技術は、ISS後の宇宙環境利用へと引き継がれるものである。APRSAFは、LEO環境における学術的および商業的な利用を支持する。

さらに、APRSAFは国際的な宇宙探査イニシアチブに関する情報交換の場を提供した。第3回宇宙フロンティア分科会参加者によるラウンドテーブルディスカッションが開催され、本年は開催国であるオーストラリアが共同議長として参加し、アジア・太平洋地域における探査活動の推進強化が図られた。また、ISECGをはじめとする国際的な団体から講演者を招き、宇宙探査における世界的な動向がAPRSAF参加者と共有された。

APRSAFは、アジア・太平洋地域の人々を対象に、「ポスターコンテスト」「世界を繋ぐオンライン天体観望会」、および「パース天文台での現地天体観望会」を開催した。こうした取り組みは多くの参加者を引き付け、幅広い年齢層の関与を促進するとともに、宇宙への関心を喚起した点で高く評価された。また、2025年の実施を目指した宇宙工学教育プログラム「CanSatコンペティション」の立ち上げに向けた議論および準備が開始されたことを歓迎する。宇宙教育for All分科会の年次会合では、次世代が宇宙の持続可能性に関する重要な課題に取り組む力を育むことを目的に、宇宙教育に関する各セッションを運営した。「若手主導の活動セッション」では学生に発表の機会が提供された。さらに、「宇宙教育を全ての人に:初等教育から高等教育までのセッション」および「アジア太平洋地域宇宙教育会議」を通じて、宇宙教育の発展および実践が共有され、今後の発展に向けた意見交換が行われた。また、昨年を上回る発表者を迎え、「ダイバーシティとインクルージョンセッション」が開催され、参加者は宇宙教育におけるダイバーシティとインクルージョンの重要性と意義を認識した。

APRSAFは、宇宙技術の開発およびその社会課題解決への応用を促進する情報や経験を共有する場を提供した。アジア・太平洋地域全体からの多様な参加を歓迎し、意見交換や優良事例の共有を通じて、システムエンジニアリング(SE)、プロジェクトマネジメント(PM)、安全およびミッション保証(S&MA)の能力向上に関する議論が行われた。宇宙活動が活発化する中、産学官の連携が社会に貢献する持続可能な地域宇宙セクターを実現するための鍵であることが認識された。

APRSAFは、官民合同セッションを通じて、宇宙活動の長期的持続可能性に関する技術的、法的、政策的な側面についての発表および議論が行われたことを歓迎する。このセッションでは、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)が策定した「宇宙活動の長期的持続可能性のためのガイドライン」の実施に関する情報共有および相互学習が促進された。APRSAFは、持続可能な宇宙利用という地球規模の課題に対応するため、地域の宇宙技術および政策・法律能力の向上に寄与する部門横断的な地域議論が継続されることを期待する。

APRSAFは、2023年のAPRSAF-29において、第3フェーズとなる「国内宇宙法制に関する国際協力イニシアチブ(NSLI)」が開始され、COPUOSに関連する課題に加え、宇宙経済の促進、宇宙資源、アルテミス合意への署名状況など、地域共通の関心事項が取り上げられていることを確認した。また、同委員会においては、COPUOSに共同提出される報告書の準備が着実に進展していることも確認された。さらに、APRSAFは、地域内の共通する課題に対する国家宇宙法および政策の策定・実施能力を国際規範に基づいて強化するうえで、APRSAFの下で行われているこうした宇宙政策および法律コミュニティの活動が果たしている貢献を認識した。APRSAFはまた、新興技術および宇宙活動の規制に関する議論、ならびに月面活動の持続可能性の文脈における調整やガバナンスの機会についての議論を歓迎する。

iv. 新たな産業プレーヤーの参加を推奨し、地域全体にわたる多様な連携を促進するため、

APRSAFは、宇宙の持続可能かつ責任ある利用を含む地域産業の課題を共有するとともに、宇宙産業の現状および地域宇宙経済の将来的な成長可能性について議論した。APRSAFは、官民セクター間の連携を継続的に促進するための場を提供することを期待している。その中で、民間主導の宇宙活動の拡大を奨励し、地域における宇宙経済の発展に貢献することを目指す。

第31回年次会合(APRSAF-31)は、2025年11月18日から21日にかけてフィリピン・セブにて開催される予定である。第32回年次会合(APRSAF-32)は、2026年にタイで開催される予定である。

以上

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