APRSAF-28
2022年11月15日~18日
ベトナム・ハノイ
APRSAF-28
2022年11月15日~18日
ベトナム・ハノイ
今年、「Bridging Space Innovations Opportunities for Sustainable and Prosperous Future(持続可能で豊かな未来への懸け橋 宇宙イノベーション)」のテーマの下、第28回年次会合 (APRSAF-28) をベトナム・ハノイの地にて3年ぶりの対面形式(in person)及びオンライン形式のハイブリッドで開催できたことは、大きな喜びである。
この間、人類はパンデミックのみならず、世界的な気候変動とそれに伴う大規模な災害という困難にも直面してきた。そして、衛星による地球観測、測位及び通信といった宇宙技術は、他の手段とともに機能し、困難を克服する取組に貢献してきた。世界がさまざまな困難な中にあっても、APRSAFは多様なプレイヤーが参加するオープン性を確保し、グローバルなパートナーシップのもと各イニシアティブが活発に活動でき、将来に向けて共に歩み進められる世界であり続けられることを祈念する。
今次のAPRSAFにおいては、2021年のAPRSAF-27に再編した新たな分科会の活動が活発に行われた。また、地域の社会経済発展及び社会課題解決のための成果目標である「名古屋ビジョン」に掲げた4つの課題に沿って、各分科会において各イニシアティブでの取組が進捗していることが確認されるとともに、次なる取組に向けた充実した議論が展開された。
(1) 広範な地上課題の解決の促進
アジア太平洋地域において、広範な地上課題の解決、すなわち、衛星を用いた気候変動緩和および適応、災害マネジメントやその他の地球規模課題の解決に貢献するため、衛星データが地上データとともに活用されている。APRSAFは、「宇宙技術を用いた環境監視」(SAFE)の活動においては、多国間の協力により、地域の共通課題である農業や水資源の課題の解決に向けたプロジェクトが確実に進展していることを認識した。APRSAFは、ベトナム国家宇宙センター(VNSC)が主導する、水田からのメタン排出に関する新しいSAFEプロジェクトや、SAFEの成果を活用したAFSIS(ASEAN食料安全保障情報システム)等での現業利用、ASEAN等とのトレーニングの実施など同地域でのキャパシティビルディング活動の展開を歓迎する。
また、宇宙技術を用いて災害被害軽減を目指す「センチネルアジア」の推進については、STEP3として、発災後の災害状況把握のみならず、減災や復興も包含した災害サイクルに対応した活動に関しても各国防災関連機関との連携を強化するとともに、多国間協力による進展と仙台防災枠組への貢献を歓迎する。
APRSAFは、引き続き、地球観測・測位衛星等の宇宙技術の利用可能性の議論の継続に加え、宇宙機関、利用機関、国際機関および開発援助機関との更なる連携や協力を強化していくことを認識する。
(2) 人材育成や科学技術力の向上
APRSAFは、Kibo-ABCイニシアティブの設立10周年を祝し,Kibo Robot Programming Challenge、Asian Try Zero-G 2022、 Asian Herb in Spaceといった様々な国際協力プロジェクトの継続・発展と、参加国・地域の拡大を歓迎する。APRSAFは、国際宇宙ステーション・日本実験棟「きぼう」の各種利用(高品質タンパク質結晶生成実験や超小型衛星放出KiboCUBEプログラムなど)を通した取組が、 多くの若手研究者・技術者・青少年の参画を促し、科学技術の発展と人材育成等のSDGs達成に寄与したことを認識する。APRSAFは、国際宇宙探査に関する取組に関する情報交換が継続的になされたことを歓迎する。
また、高等教育機関と連携した宇宙教育活動を通じ、アジア太平洋地域における次世代の人材育成に貢献することを目指した宇宙教育の実践例の収集を行う「アジア太平洋地域宇宙教育会議」の立ち上げを歓迎する。
APRSAFは、世界において、超小型・小型衛星によるコンステレーションを構築し、新たなサービス創出に向けた取り組みが加速している中で、各国のこれらの最新の技術動向とシステムズエンジニアリング/プロジェクトマネジメントに関する手法を共有し、地域全体の宇宙技術開発能力の向上のための情報交換の機会が提供されたことを歓迎する。加えて、軌道利用の安全・宇宙活動の持続性の確保(Safe and Sustainable Space Activities)に関する最新状況を共有し、各国によるミッションの成功に不可欠な安全・ミッション保証(S&MA)活動の紹介と議論を通し、アジア地域全体のS&MAコミュニティの構築に向けた取組みを歓迎する。
APRSAFは、これらの人材育成や科学技術力の向上に向けた取り組みを通じ、SDGsの達成に寄与していくことを期待する。
(3) 地域の共通課題に対する政策実施能力の向上
APRSAFは、地域の共通課題に対する各国の政策実施能力の向上を目指した「宇宙法制イニシアティブ(NSLI)」の第二フェーズにおいて新たな参加国とともに、グローバルな政策課題である宇宙活動の長期持続可能性等に関する各国の取組状況の情報交換や議論が行われたことを歓迎する。また、宇宙法・政策実務家間のコミュニティにおいて、政策的側面からの宇宙活動のSDGsへの貢献に関する情報交換や議論が行われたことに加え、次世代の宇宙法政策研究者のためのセッションが初めて行われたことを歓迎する。加えて、産業界や国際機関等との議論を通して、政府による宇宙産業振興のための政策の必要性を認識する。
(4) 地域のニュープレイヤーの参画促進と多様な連携の推進
APRSAFは、産業界とのコミュニケーションの高まりに基づいた宇宙イノベーションのため、民間セクターの成長を促進するため、増加しつつある政府の役割が重要であると認識した。
宇宙産業ワークショップとプレナリーでの関連セッションにおける官民の議論を通して、APRSAFが宇宙ビジネスの拡大に貢献し、官民・国際・異業種などとのさまざまなパートナーシップ(連携)により宇宙イノベーションが生み出される場として機能することを確認した。また、(宇宙イノベーションを生み出す)機会提供を継続し、取組を充実させていくことについても確認した。
我々は、APRSAFにおける上記の活動を通じてSDGsとアジア太平洋地域の社会・経済の発展や地域課題の解決に貢献することを目指していくことを確認し、APRSAF-28を終了した。また、APRSAFは、関連する宇宙活動において次世代や多様な参加者の関与を促進することが重要であると認識した。
第29回年次会合(APRSAF-29)は2023年にインドネシアで開催する。
以上