APRSAF-28
2022年11月15日~18日
ベトナム・ハノイ
APRSAF-28
2022年11月15日~18日
ベトナム・ハノイ
第28回アジア・太平洋地域宇宙機関会議 (APRSAF-28) はベトナム科学技術院 (VAST)、文部科学省 (MEXT)、宇宙航空研究開発機構 (JAXA)の共催により2022年11月15日(火)~18日(金)の4日間 「持続可能で豊かな未来への架け橋 宇宙イノベーション」 をテーマに、ベトナム、ハノイ市で開催されました。
新型コロナ感染症拡大以降、3年ぶりの現地開催(一部オンライン)となった今会合はアジア・太平洋各国の宇宙機関の機関長及び代表者の出席を得て、36の国・地域、4つの国際機関から総計359名(うち、オンライン参加者数97名)の参加がありました。国内外の関係者からは、3年ぶりに現地開催となったことに対する喜びと、官民の交流の場としてのAPRSAFへの大きな期待の声が寄せられました。
各分科会会合について今回は現地開催(一部オンライン)で実施し、2019年の名古屋開催の時に採択された「名古屋ビジョン」に沿って活動を続ける5分科会からその活動について進捗情報が共有され、その成果を「共同声明」としてまとめました。
チャウ・ヴァン・ミン ベトナム科学技術院(VAST)院長、永岡桂子 文部科学大臣(ビデオメッセージ)からの開会の挨拶で幕を開けた全体会合(プレナリー)の2日間では ①「アジア太平洋地域における宇宙イノベーションのための衛星利用の課題」、 ②「持続可能で豊かな未来を実現するイノベーションのための環境づくり」等をテーマに宇宙分野以外の多様な参加者との協議を通して、アジア・太平洋地域における宇宙活動が継続・進展していることを確認しました。以下は各セッションについての報告です。
(1) セッション1:「アジア太平洋地域における宇宙イノベーションのための衛星利用の課題」
ベトナムVNSC及びタイGISTDAがモデレータとなり、内閣府、オーストラリア連邦科学産業機構(CSIRO)、オーストラリア宇宙局(ASA)、フィリピン宇宙庁(PhilSA)により、アジア・太平洋地域における災害管理や気候変動などの社会課題の解決や社会経済の発展を目指し、地上データとの組み合わせや、地球観測衛星データおよび測位衛星データの活用促進の事例を紹介しました。アジア開発銀行(ADB)からは地域の共通課題の解決のための衛星データ利用等の有用性について意見が為されました。
(2) カントリーレポート
18ヵ国より、最新の活動状況、将来計画、産業振興等政策面で取組み等について報告がありました。
(3) 国際機関のレポート
国連宇宙部(UNOOSA)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP),アジア開発銀行(ADB)及び世界銀行より、各機関における活動状況についての情報共有とともに、APRSAFや宇宙機関等との協力や宇宙技術の活用への期待等が述べられました。
(4) 分科会/イニシアチブ報告
11/15、16の2日間に行われた各分科会会合のまとめが報告されました。
(5) セッション2: 「持続可能で豊かな未来を実現するイノベーションのための環境づくり」
日・豪からのパネリストを迎え、各国の宇宙イノベーションに対する強みと弱み、及び、宇宙イノベーションに対する官側(政府や宇宙機関)の役割、について、各国の背景や特徴、そして抱える問題と課題を対比しつつ、国ごとに最適な宇宙イノベーションとはどうあるべきかについて問いかける議論が展開されました。また、アジア太平洋地域のプレーヤーが連携し、取り組むべき共通の課題についても意見が交わされ、地域共通の課題に対し、地域全体でパートナーシップ活動を行う可能性やその意義についての議論が展開されました。
(6) ラウンドテーブル
アジア太平洋地域の11か国の宇宙機関及び代表者が登壇したラウンドテーブルでは、APRSAFの今後の活動への期待として、以下の2点についての重要性について認識が共有され、成果文書に以下の記述がなされました。
①「宇宙イノベーション」(の機会創出)に向け、民間セクターの進展を促進させるために、民間セクターとの強化されたコミュニケーションの上での政府の役割の重要性が増していること。
②関連した宇宙活動への次世代の関与と多様な参加を加速していくこと。
(7) APRSAF賞
SAFEプロジェクトに貢献してきた3名(ロキス・クマルディン博士(インドネシアBRIN)、リザトウス・ショフィヤティ博士(インドネシアBRIN)及び祖父江真一博士(JAXA))が「APRSAF Space Achievement Award(貢献賞)」を受賞されました。
(8) 成果文書
APRSAF-28における議論をまとめ、成果文書として 『共同声明(APRSAF-28 Joint Statement)』を採択しました。
(9) 参加者ネットワーキング支援
今回のAPRSAFでは初の取り組みとして、参加者ネットワーキング支援を行いました。現地での意見交換を希望する声や、自社あるいは他社の紹介を希望する声が多くあり、参加者同士(120名が参加)が直接コンタクトできるようなプラットフォームを構築し、支援しました。
全体会合で報告された各分科会・ワークショップでの協議結果は以下の通りです。
(1) 社会便益のための衛星利用分科会(Satellite Applications for Societal Benefit Working Group, SAWG)
センチネルアジア(災害管理)やSAFE(気候変動適応)等への衛星データ利用について多国間での展開状況を共有しました。また、水田からのメタン排出に関わる水利用状況把握を行うSAFE CH4RiceプロジェクトのVNSCからの提案を採択しました。地球観測衛星・測位衛星等から得られる情報の統合的利用の可能性について継続検討することとしました。
(2) 宇宙能力向上分科会(Enhancement of Space Capability Working Group, SCWG)
アジア・太平洋地域における宇宙技術基盤の強化に貢献するため、新しい技術トレンドとして小型衛星関連技術や課題を情報交換する他、システムエンジニアリングやプロジェクトマネジメント(SE/PM)の有効性や実践事例を共有すると共に、安全・ミッション保証(S&MA)について「安全で持続可能な宇宙活動」をテーマに各国の積極的な取組み状況や課題を共有しました。
(3) 宇宙教育for All分科会(Space Education for All Working Group, SE4AWG)
高等教育機関(東京大学・UNISEC)と連携し、アジア太平洋地域における次世代の人材育成に貢献することを目指した高等教育機関における宇宙教育の実践例の収集を行う「アジア太平洋地域宇宙教育会議」を初めて開催しました。開催に伴い、宇宙教育に関わる若い世代のための活動(Youth Empowerment)に関するセッションを設けました。APRSAF-28水ロケット国際大会はオンラインで実施しました。APRSAF-28ポスターコンテストはオンサイトでのポスター展示、オンラインでの投票のハイブリッド形式で行いました。 なお、APRSAFにおける水ロケット国際大会については、水ロケットを通じてものづくりや科学技術を学び、国際交流を深める機会として2005年(APRSAF-12)よりJAXAが主催して実施してきましたが、水ロケットは自立的な取り組みとして各国で指導・運営できる状況にあることを踏まえ今回の開催をもって終了することになりました。
(4) 宇宙フロンティア分科会(Space Frontier Working Group, SFWG)
「きぼう(地球低軌道)」の船内・船外を生かした科学・技術および人材育成に関する利用協力を積極的に推進しました。インドネシア、タイ、台湾より今後の「きぼう」利用計画及びミッション案が提示されました。参加国・地域が飛躍的に増加したKibo-ABCの各種プログラムの成果や各機関の活動状況を共有し、次回実施に向けて数か国からの新規参加希望を得ると共に、将来計画を議論しました。また、国際探査計画の最新動向に加え、産業界や大学の取組みや関心を共有する場を提供しました。
(5) 宇宙法政策分科会(Space Policy and Law Working Group, SPLWG)
各国の宇宙法政策に関する能力向上を目的とし、共通の地域課題に対する政策オプションに関する情報交換や宇宙法政策コミュニティの強化を図りました。地域における宇宙法・政策の最新動向、NSLIの第二フェーズの活動状況、宇宙活動に関する長期持続性(LTS)ガイドラインの各国実施状況、SDGs等のグローバル課題について情報交換を行いました。また、初の取り組みとして次世代の宇宙法政策研究者の発表の場を提供しました。なお、SDGsについて今後も本WGでの情報共有や意見交換を継続することや、更に多様な参加者を取り込んで本WG活動を行っていくことを確認しました。
(6) 宇宙産業ワークショップ (Space Industry Workshop: SIWS)
ワークショップでは、レガシー企業からスターアップ企業、アジア太平洋地域からグローバルプレイヤーまで、官民の幅広い組織とメンバーが集まり、活発な議論が展開されました。4つのパネル ディスカッションとラウンドテーブルにおいては、宇宙産業の振興に向けた機運を高める目的で、現在の活動状況を共有し、協力に関する課題/期待について共有しました。宇宙機関と民間がそれぞれの役割や期待される活動について意見交換を行い、宇宙機関は今後の政策の方向性を認識し、民間は今後の事業展開の方向性を把握する場となりました。
プレナリー会場では展示ブースを設け、協賛いただいた企業に企業紹介の場を提供するとともに、一部の企業には宇宙産業WSでキーノートスピーチにもご登壇頂きました。
Sodern(仏)
Surrey Satellite Technology Ltd(英)
The Society of Japanese Aerospace Companies (SJAC)
APAQG (Asia Pacific Aerospace Quality Group) (日本)
National Space Organization(台湾)
IHI Aerospace Co., Ltd.(日本)
DigitalBlast Inc.(日本)
Vegastar Technology Co., Ltd.(ベトナム)
APRSAF-28の会期前後一か月以内に合わせて、下記主催者(企画・運営は主催者)による各種サイドイベントがオンサイト(又はオンライン)で開催されました。(計5件)
Daniel K. Inouye Asia Pacific Center for Security Studies(アメリカ)
“Bridging Space Innovations Opportunities: Perspectives on Asia Pacific Experiences“
Space Generation Advisory Council/JAXA(WL室)(豪州・日本)
“Asia-Pacific Space4Women Workshop and Mentoring Session”
Asia Pacific Oceania Space Association (APOSA)(インド)
“NewSpace in Asia Pacific Climate Change Action“
United Nations Office for Outer Space Affairs(UNOOSA)(国際機関)
“UNOOSA Capacity-Building Activities and Collaborations for Asia and the Pacific Region“
NSPO (National Space Organization)(台湾)
“Expanding Open Data Cube (ODC) Applications in Asia-Pacific Region“
次回APRSAF-29 (2023年)はインドネシアで、その次のAPRSAF-30(2024年)はオーストラリアでの開催が決定しています。